【今日の1分間読書】バレンタインの終わらない夜 第6章【Claude】

ついに自分の気持ちを悠真に伝えた美咲。それに呼応するように波打つバリア。そして水を差すように現れた井上拓也。食糧庫が襲撃されると聞き、甘い空気から現実に戻される二人。そして物語は新たな局面を迎えようとしていた。それでは少しの間お付き合いください。

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第6章:脱出の兆し

食料庫での騒動から一夜が明けた。体育館に集められた生徒たちの間で、ざわめきが広がっていた。佐々木翔の実力行使派による食料庫襲撃は、井上拓也率いる協調派によって何とか阻止されたものの、学校全体の緊張感は一層高まっていた。

「みんな、落ち着いてください」

生徒会長の拓也が、マイクを手に体育館の壇上に立つ。

「昨夜の騒動で、私たちが直面している問題が明確になりました。このまま閉じ込められ続ければ、物資は確実に枯渇します。だからこそ、今こそ冷静に、脱出の方法を考えるべきなのです」

壇上の隣では、化学部長の田中美月が腕を組んで考え込んでいた。彼女の「科学探求派」は、バリアの性質を科学的に解明しようと、連日実験を重ねていた。

体育館の後方で、佐藤悠真は壁に寄りかかりながら状況を見守っていた。隣には山田美咲が立ち、時折、不安そうな表情を見せる。二人の間には、昨夜の告白以来、言葉にできない緊張感が漂っていた。

「実験の結果が出ました」

美月が前に進み出て、声を上げた。

「このバリアは、通常の物理的な力では破壊できません。しかし、昨日の記録を分析したところ、興味深い現象が観察されました」

スクリーンに、紫色のバリアが波打つ映像が映し出される。

「これは昨夜、図書室付近で記録された映像です。バリアが明らかに反応を示しています。この時間帯に、特別な出来事はありましたか?」

悠真と美咲は、思わず顔を見合わせた。図書室での告白の瞬間、確かにバリアが反応していた。美咲の頬が、かすかに赤くなる。

「私が知っているバリアの真実を、話す時が来たようですね」

突如、拓也が口を開いた。体育館全体が、水を打ったように静まり返る。

「このバリアは、誰かの強い感情によって生み出されたものです。特に、抑圧された感情、言い換えれば、誰かに伝えたくても伝えられない想いが、このバリアを形成しているのではないかと考えています」

美咲は、その場に立っているのが辛くなった。悠真は、さりげなく彼女の手を握った。

「つまり、脱出の鍵は感情にある。誰かの心の中に、このバリアを解く力があるはずだ」

佐々木が、苛立たしげに叫んだ。

「じゃあ、その『誰か』を見つけ出せばいいんだろ?」

「暴力的な方法は逆効果です」美月が冷静に言い放つ。「バリアは感情と連動している。恐怖や不安を煽れば、さらに強固になるだけです」

体育館には、重苦しい空気が漂った。生徒たちの間で、疑心暗鬼の目が交わされる。

「私には、ある仮説があります」

拓也が再び口を開いた。

「このバリアが現れたのは、バレンタインデー前夜でした。誰かの、伝えたくても伝えられない想い。その日にしか言えない告白。それらが、このバリアを作り出したのではないでしょうか」

その言葉に、美咲は身震いした。悠真の手が、さらに強く彼女の手を握る。

「だとすれば、解決の糸口はそこにある。誰かが、本当の気持ちを伝えること。それが、私たちをこの状況から解放する鍵になるかもしれません」

拓也の言葉が、体育館に響き渡った。

その日の夕方、悠真と美咲は校舎の屋上にいた。夕陽に照らされたバリアが、美しくも不気味な光を放っている。

「私のせいなのかな」美咲が、小さな声でつぶやいた。

「違う」悠真は即座に否定した。「これは、誰か一人の責任じゃない。みんなの中にある、言えない想いの集まりかもしれない」

「でも、私の告白の時に、バリアが反応したのは確かよ」

悠真は、美咲の方を向いた。

「なら、俺たちにできることがあるはずだ。俺も、ちゃんと答えを出さないといけない」

その時、校内放送が鳴り響いた。美月の声だった。

「緊急事態です。化学室での実験で異常な反応が発生。バリアが、学校の中心部で激しく波打っています。各自、指定の避難場所に移動してください」

二人は顔を見合わせた。何かが、始まろうとしていた。

屋上から見下ろすと、中庭のバリアが虹色に輝きながら、大きく波打っているのが見えた。まるで、誰かの心の叫びが形になったかのように。

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最後に

バリアの謎を徐々に解き明かす生徒たち。誰かの感情や想いがこの状況から解放する鍵になるらしい。それは自分ではないかと不安になる美咲。そして学校の中心部でバリアが大きく波打ちを始める。

それでは続きはまた後日。ご期待下さい。

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