バリアの謎を徐々に解き明かす生徒たち。誰かの感情や想いがこの状況から解放する鍵になるらしい。それは自分ではないかと不安になる美咲。そして学校の中心部でバリアが大きく波打ちを始める。それでは少しの間お付き合いください。
第7章:鍵の在りか
化学室での異常な反応から一夜が明けた。学校全体が、まるで息を潜めているかのような静けさに包まれていた。
佐藤悠真は、山田美咲と共に図書室に向かっていた。二人の足音が、静まり返った廊下に響く。
「美咲、大丈夫か?」
悠真は、隣を歩く美咲の顔を覗き込んだ。彼女は昨夜からずっと、何かを考え込んでいるようだった。
「うん…ただ、昨日の化学室での出来事が気になって」
美咲の声には、迷いが混じっていた。
二人が図書室に到着すると、そこには既に井上拓也と田中美月が待っていた。拓也の表情は、いつになく緊張していた。
「来てくれてありがとう」拓也が口を開く。「実は重大な発見があったんだ」
美月が、テーブルの上に広げられた古い文書を指さした。
「これは、学校の創立者の日記よ。図書室の奥深くから見つかったの」
悠真は、黄ばんだ紙に目を走らせた。そこには、学校の設立当初の様子が克明に記されていた。そして、ある一節が目に飛び込んできた。
「想いの結晶…学び舎の中心に…」
美咲が、思わず声に出して読んだ。
「そう、この学校には創立当初から、ある仕掛けが施されていたんだ」拓也が説明を始めた。「創立者は、生徒たちの純粋な想いをエネルギーに変換する装置を、学校の中心部に埋め込んだらしい」
「でも、なぜ…」
悠真の問いに、美月が答えた。
「おそらく、教育の理想を追求するためよ。純粋な想いが、学びを深めると信じていたのでしょう」
「そして今、その装置が暴走している」拓也が続けた。「誰かの強い感情が引き金となって、バリアを生み出してしまったんだ」
一瞬、美咲の体が震えたのを、悠真は見逃さなかった。
「じゃあ、その装置を止めれば…」
「そう、それが『鍵』なの」美月が頷いた。「でも、単に物理的に止めるだけじゃダメ。想いのエネルギーで動いているんだから、それに見合う強い感情で中和させる必要があるわ」
「問題は、その装置がどこにあるかだ」拓也が眉をひそめる。「日記には『学び舎の中心に』とあるが、具体的な場所は書かれていない」
その時、図書室のドアが勢いよく開いた。佐々木翔が、数人の仲間を連れて入ってきた。
「おい、どうなってる?なんで俺たちを呼ばなかった?」
佐々木の声は、怒りに満ちていた。
「落ち着いて」拓也が両手を広げ、宥めるように言った。「今、状況を説明しようとしていたところだ」
しかし、佐々木は聞く耳を持たなかった。
「もういい。お前らが動かないなら、俺たちで探す。学校の中心部なんだろ?体育館を探れば見つかるはずだ」
そう言うと、佐々木たちは走り去っていった。
「まずい」悠真が呟いた。「乱暴に探せば、かえって事態を悪化させかねない」
「追いかけましょう」美咲が決意を込めて言った。
四人は急いで体育館に向かった。しかし、そこで彼らを待っていたのは、想像を超える光景だった。
体育館の床が、まるで生きているかのようにうごめいていた。床板の隙間から、かすかな紫色の光が漏れている。
「見つけたぞ!」佐々木が叫んだ。「ここだ、ここを壊せば…」
「待って!」美咲が必死に叫ぶ。「そんなことしたら…」
しかし、遅かった。佐々木が床に向かって飛び込んだ瞬間、まばゆい光が体育館を包み込んだ。
光が収まると、そこには…何も変わっていなかった。バリアは依然として存在し、床の異変も続いていた。
「どうして…」佐々木が呆然と立ち尽くす。
「物理的な力では、装置は止められないんだ」拓也が静かに言った。
その時、美咲が一歩前に進み出た。
「私…わかったわ」
彼女の声は、不思議な力強さを帯びていた。
「鍵は、私たちの心の中にある。この装置は、私たちの想いを映し出す鏡なの」
悠真は、美咲の横顔を見つめた。彼女の瞳に、決意の光が宿っているのが見えた。
「じゃあ、どうすれば…」美月が問いかける。
美咲は深呼吸をして、言葉を続けた。
「私たち全員の、本当の気持ち。それを、ここでさらけ出す必要があるの」
体育館に集まった生徒たちの間で、ざわめきが広がった。
「みんなの本当の気持ち…か」悠真が呟いた。
彼は、美咲の手をそっと握った。二人の視線が交差する。そこには、不安と期待が入り混じっていた。
「やってみよう」悠真が言った。「俺たちから始めよう」
美咲はうなずいた。二人は、蠢く床に向かって一歩を踏み出した。
その瞬間、床から立ち上る光が、二人を包み込んだ。
最後に
なんと学校の中心部には生徒たちの純粋な想いをエネルギーに変換する装置が埋まっていた。それが誰かの強い感情に反応し暴走した結果、バリアが生み出されてしまった。学校の中心部である体育館に向かう一同。佐々木が力ずくで止めようとするも装置は止まらない。装置を止めるには本当の気持ちをさらけ出さなければならない。
それでは続きはまた後日。ご期待下さい。
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