三つの派閥に分かれた生徒たち。「協調派」は校内の秩序維持を重視し、「実力行使派」はバリアに対する物理的な攻撃を試み、「科学探求派」は様々な実験を行おうとしていた。悠真と美咲はどのグループにも属そうとは考えていなかった。そんな中、美咲があることに気付く。バリアが現れたことは自分に関係しているかもしれないと。その頃、化学室では火災が発生していた。一体なぜ。それでは少しの間お付き合いください。
第3章:「生存のための選択」
化学室からの火災は、幸いにも大事には至らなかった。「科学探求派」の実験が失敗し、小規模な爆発を引き起こしたのだ。しかし、この出来事は学校内の緊張をさらに高めることとなった。
翌朝、生徒会長の拓也が新たな発表を行った。
「食料と水の状況が、予想以上に深刻です」彼の声は重かった。「現在の消費ペースでは、あと2日もちません」
会場がざわめく中、悠真は隣にいる美咲の手が震えているのを感じた。昨日の彼女の言葉が頭をよぎる。このバリアと美咲の関係とは、一体…。
「そのため、以下の対策を取ります」拓也は続けた。「第一に、食料配給の制限。一日一食とします。第二に、水の使用を飲用のみに限定します」
不満の声が上がったが、誰もがこの決定が必要だと理解していた。
集会の後、悠真は美咲を誘って、人気のない図書室に向かった。
「美咲、昨日の話の続きをしよう」悠真は静かに切り出した。「このバリアと、君にどんな関係があるの?」
美咲は本棚に目を向けたまま、しばらく沈黙していた。
「私ね、バレンタインデーに…」彼女の声が震える。「悠真くんに、好きな気持ちを伝えようと思ってたの」
悠真の心臓が大きく跳ねた。
「でも、怖かった。断られるのが怖くて…」美咲は続ける。「そしたら、この状況になって…まるで、私の気持ちが具現化したみたいに、私たちは閉じ込められちゃった」
悠真は黙って美咲の話を聞いていた。
「ごめんなさい」美咲の目から涙が溢れ出す。「もしかしたら、これは全部私のせいかもしれない」
悠真は迷わず美咲を抱きしめた。「違うよ。これは君のせいじゃない」
その時、図書室のドアが勢いよく開かれた。
「おい、ここで何してる?」佐々木とその仲間たちが現れた。「食料の在庫を探してたんだが、お前ら知らないか?」
悠真は美咲を背後にかばいながら答えた。「知りません」
佐々木は二人を値踏みするような目で見た。「本当かよ。まあいい、俺たちで探すから」
彼らが去った後、悠真は決意を固めた。「美咲、俺たちも動かないと。このままじゃ、みんな危険だ」
二人は校内の探索を始めることにした。まず向かったのは、使われていない倉庫。古い運動用具や、壊れた机が積まれている中、彼らは慎重に調べていった。
「あ、これ」美咲が古い段ボール箱を指さした。開けてみると、防災用の非常食が数個出てきた。
「よかった」悠真はホッとした表情を見せる。しかし、すぐに真剣な顔に戻った。「でも、みんなで分けても、一日分にもならないな」
探索を続ける中、二人は意外な発見をした。用務員室の裏にある小さな物置。そこには、わずかではあるが、ペットボトルの水が保管されていた。
「これで少しは…」
悠真の言葉が途切れた。廊下から足音が聞こえたのだ。二人は咄嗟に物置に隠れた。狭い空間で、互いの心臓の鼓動が聞こえるほどだ。
足音の主は、「科学探求派」のメンバーだった。彼らは小声で話している。
「あの実験、絶対におかしいわ」田中美月の声が聞こえる。「あのバリア、科学では説明できない」
「でも、他に方法がないじゃない」別の生徒が答える。
足音が遠ざかっていくのを確認してから、二人は物置から出た。
「悠真くん」美咲が真剣な表情で言う。「私たち、見つけた物資をどうする?」
これは難しい選択だった。見つけた食料と水を独占するか、みんなで分けるか。独占すれば二人の生存確率は上がるが、それは他の生徒たちを見捨てることになる。
悠真は深く息を吐いた。「みんなに知らせよう。でも、一度に全部は出さない。少しずつ、計画的に使おう」
美咲は頷いた。二人は見つけた物資の一部を持って、生徒会室に向かった。
途中、美咲が悠真の袖を掴んだ。「ねぇ、悠真くん。私の気持ち…答えなくていいから」
悠真は立ち止まり、美咲をまっすぐ見つめた。「今は生き延びることが先だ。その後で、ちゃんと話そう」
その言葉に、美咲はかすかに微笑んだ。二人は再び歩き出す。しかし、この選択が新たな試練を招くことを、まだ知る由もなかった。
最後に
化学室の火災は大事には至らなかった。しかし新たな問題として食料と水の量が深刻な状態に。そんな中、美咲は話の流れから自分の思いを悠真に伝える。しかし今はその思いに答えることができない悠真。生徒たちは助かるのか……そして二人の恋の行方は!?
それでは続きはまた後日。ご期待下さい。
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