化学室の火災は大事には至らなかった。しかし新たな問題として食料と水の量が深刻な状態に。そんな中、美咲は話の流れから自分の思いを悠真に伝える。しかし今はその思いに答えることができない悠真。生徒たちは助かるのか……そして二人の恋の行方は!? それでは少しの間お付き合いください。
第4章:「失われた信頼」
生徒会室での物資報告は、予想以上の波紋を広げた。
「なぜ今まで黙っていた?」佐々木が悠真を睨みつける。「独り占めするつもりだったんじゃないのか?」
「違います」悠真は冷静に答えた。「混乱を避けるため、計画的な配給を考えていただけです」
生徒会長の拓也が間に入った。「佐藤君の判断は正しいと思います。むしろ、彼らの発見のおかげで我々の選択肢が広がりました」
しかし、この出来事を機に、生徒たちの間で疑心暗鬼が広がっていった。誰かが物資を隠しているのではないか。誰かが独断で行動しているのではないか。そんな不信感が、静かに、しかし確実に広がっていった。
夜になり、悠真と美咲は屋上で密かに話し合っていた。星空が紫色のバリアを通して、不気味に歪んで見える。
「あのバリアの正体、やっぱり私に関係があるのかな」美咲が不安そうに呟いた。
悠真は慎重に言葉を選んだ。「もしそうだとしても、君を責めることはできない。誰にだって、言えない気持ちってあるはずだから」
その時、屋上のドアが開く音がした。
「やっぱりここにいたか」
振り向くと、そこには佐々木と、彼の取り巻き数人が立っていた。
「お前ら、まだ何か隠してるんじゃないのか?」佐々木が二人に詰め寄る。
「何も隠してません」悠真は毅然とした態度で答えた。
「嘘つけ!」佐々木が悠真の襟を掴む。「さっきから二人で密談してただろ?」
その時、美咲が叫んだ。「やめて!本当に何も…」
彼女の言葉は途中で途切れた。佐々木の仲間の一人が、美咲の腕を乱暴に掴んでいたのだ。
「離せ!」悠真は反射的に佐々木を押しのけ、美咲の元へ駆け寄った。
混乱の中、誰かが悠真を押した。彼はバランスを崩し、手すりに激しくぶつかった。
「きゃっ!」美咲の悲鳴。
その瞬間、異変が起きた。紫色のバリアが突然、強く輝きだしたのだ。まるで、美咲の感情に呼応するかのように。
佐々木たちも、その異常な現象に気づいた。「な、何だ、これ…」
バリアの輝きは次第に収まっていったが、この出来事は決定的な疑惑を生んだ。
「お前ら…このバリアと関係あるのか?」佐々木の声には、怒りと恐れが混ざっていた。
その晩、学校中に噂が広がった。バリアの出現は、山田美咲と関係があるのではないか。彼女の存在が、全員を閉じ込めている原因なのではないか。
翌朝の体育館集会。美咲は、周囲から向けられる冷たい視線に耐えていた。悠真は彼女の隣に立ち、さりげなく手を握った。
拓也が壇上に立った。「昨晩の出来事について、話し合いたいと思います」
彼の発言を遮るように、化学部の田中が立ち上がった。「山田さんを調べるべきです。彼女とバリアの関係を、科学的に解明する必要があります」
会場がざわめく。美咲の手が震えているのを、悠真は感じていた。
「異議あり」悠真が声を上げた。「根拠のない推測で、特定の個人を責めるのはおかしい」
しかし、彼の声は届かなかった。多くの生徒が、美咲への疑惑の目を向けていた。
集会後、悠真は美咲を連れて図書室に避難した。
「ごめんなさい」美咲が泣きながら言った。「私のせいで、あなたまで…」
悠真は彼女の肩を抱いた。「謝らなくていい。俺は君の味方だから」
その時、図書室のドアがノックされた。開けてみると、そこには予想外の人物が立っていた。生徒会長の拓也だ。
「話があります」彼は二人を見つめた。「このバリアの真実について、私にも考えがあるんです」
最後に
新たな物資が見つかったことを正直に報告した悠真。しかしその結果、皆は余計に疑心暗鬼になってしまった。そして美咲の感情に呼応するように輝くバリア。果たしてどんな真実が隠されているのか。
それでは続きはまた後日。ご期待下さい。
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