新たな物資が見つかったことを正直に報告した悠真。しかしその結果、皆は余計に疑心暗鬼になってしまった。そして美咲の感情に呼応するように輝くバリア。果たしてどんな真実が隠されているのか。それでは少しの間お付き合いください。
第5章：告白
薄暗い図書室の窓際で、山田美咲は静かに立ち尽くしていた。窓の外には、学校全体を包み込む紫色のバリアが、夕暮れの空に不気味な輝きを放っている。バレンタインデーまであと数時間。本来なら、チョコレートを手渡すときの緊張感に胸を躍らせているはずだった。しかし今、彼女の心を占めているのは、まったく異なる種類の不安だった。
「悠真くん…私、もう我慢できないの」
佐藤悠真は、本棚の間から現れた美咲の声に、手に持っていた本から目を上げた。彼女の表情には、これまで見たことのない決意が浮かんでいた。
「美咲…どうしたんだ？」
悠真は本を閉じ、美咲の方へ一歩近づいた。図書室の静寂が、二人の間の緊張感をさらに高めている。
「私たち、もうこんな状況に3日も閉じ込められているわ。いつ、どうなるかもわからない。だから…だから私、もう言わなきゃいけないの」
美咲の声が少し震えている。悠真は、彼女が何を言おうとしているのか、うすうす感じ始めていた。
「私ね、バレンタインデーに悠真くんに話があって…その日のために、ずっと準備してたの」
美咲はスカートのポケットから、小さな包みを取り出した。赤いリボンで飾られた、手作りチョコレートだった。
「これ、作ったの。今こんな状況だけど…受け取ってほしい」
悠真は息を呑んだ。幼なじみの美咲が、こんな形で告白してくるとは想像もしていなかった。確かに、最近の彼女の様子がいつもと違うことには気づいていた。でも、それがこういう理由だったとは。
「美咲…俺…」
言葉に詰まる悠真。周りでは依然として、生存を賭けた緊張状態が続いている。食料は限られ、水も不足し始めている。そんな中での告白に、どう応えればいいのか。
「私、悠真くんのことが好き。ずっと前から。でも、今まで言えなくて…」
美咲の言葉は、図書室の空気を震わせるように響いた。その瞬間、不思議なことが起こった。彼女の感情が高まるにつれ、窓の外のバリアが微かに波打ち、その紫色が一瞬だけ鮮やかさを増したのだ。
「このバリア、私の感情と関係があるんじゃないかって…みんなそう言ってる。私のせいで、みんなが苦しんでるのかもしれない」
美咲の声には、罪悪感が滲んでいた。悠真は、彼女の肩に手を置いた。
「違う。これは美咲のせいじゃない。俺たちはまだ、このバリアの正体も、出現した理由も知らない。だから、自分を責めるのはやめてくれ」
悠真の言葉は優しかったが、その心の中は複雑な感情が渦巻いていた。美咲への特別な感情。それは確かにあった。でも、今この状況で、その感情にどう向き合えばいいのか。
「俺も…美咲のことを、特別に思ってる」
言葉を選びながら、悠真は続けた。
「でも今は、俺たちの生存が最優先だ。この状況を何とかしないと」
美咲はゆっくりと頷いた。期待と諦めが入り混じった表情で。
「わかってる。でも、だからこそ言わなきゃいけないと思ったの。明日がどうなるかわからないから」
その時、図書室のドアが開く音が聞こえた。井上拓也が、少し慌てた様子で入ってきた。
「悠真、美咲さん、大変です。佐々木が、食料庫を襲撃しようとしています」
現実が、二人の甘い空気を一瞬で打ち砕いた。しかし、互いの気持ちを確かめ合ったことで、二人の間には新しい絆が生まれていた。
「行こう、美咲」
悠真が手を差し出す。美咲はそっとその手を取った。
「うん。一緒に」
チョコレートの包みを大切にポケットにしまい、二人は図書室を後にした。この閉ざされた学校で、彼らの物語は新しい局面を迎えようとしていた。愛と生存が交錯する中で、二人は手を取り合い、次なる試練に向かっていった。
バリアの向こうでは、夜の闇が静かに迫っていた。
最後に
第３章での告白は一度リセットされ第５章で改めて告白。まさかの展開ですが、第３章の言葉だけの告白と第５章のチョコレート付きの告白はまた違った意味があると思うので、まぁよしとしましょう。
ここだけの話、Claudeの文字数制限が理由で第４章までを出力した後、新しいチャットで第５章からを書き始めました。一応、第４章までの要約は引き継いでいたのですが、この章での悠真の反応を見る限り、あまり上手く引き継げていなかったようです。
さて、ついに自分の気持ちを悠真に伝えた美咲。それに呼応するように波打つバリア。そして水を差すように現れた井上拓也。食糧庫が襲撃されると聞き、甘い空気から現実に戻される二人。そして物語は新たな局面を迎えようとしていた。
それでは続きはまた後日。ご期待下さい。
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